(この記事はYouTubeにアップした動画の書き起こしです)
こんにちはかおるです。この前コミュニティ欄でこんな投稿をしました。「税の繰延効果の知識を持っている前提で、出口戦略で少しお得に売却する方法があります。それにはまず自分が積立投資している商品を分散させて購入しておくことです。わかりやすい例で言うと20年後に取り崩しを始めるとして、1年目~10年目は楽天証券、11年目~20年目はSBI証券で買うとかそういうこと。そしてリターンが低い方から売却をしていきます」。今日はこの内容について掘り下げていきたいと思います。
税の繰り延べ効果とは
こちらが今日の動画の目次です。税の繰り延べ効果を理解していないと、なぜ今回紹介する方法でお得になるのかがわからないと思うので、まずは税の繰り延べ効果について軽くお話します。その後に、お得な売却戦略を紹介して、具体的なやり方を4つ解説していきます。そして最後に少し補足説明をします。ではまず税の繰り延べ効果とは何かという話なんですけど、簡単に言うと「支払う税金を先送りにして、払わなかった分のお金を運用に回せば資金効率が高まるよ」っていうことです。簡単な例で見てみましょう。100万円で購入した投資信託が1年後に110万円、2年後に121万円と、毎年10%成長したとします。もしずっと保有していて、2年目に売却したとすると、利益は21万円です。株式投資では売却時に利益が出ていたら20.315%の税金がかかるんですけど、今回はわかりやすく20%で計算していきます。21万円の20%で4万2,000円の税金がかかるので、手元に残るお金は121万円から4万2,000円を差し引いた116万8,000円になります。では1年目にも売却して、2年目にも売却した場合はどうなるのか、計算してみましょう。1年目に売却する時点で10万円の利益が出ているので、20%分、2万円の税金が引かれて、手元に残るお金は108万円になります。この108万円を再度同じ商品に投資すると、翌年は10%値上がりして、評価額は118万8,000円になります。ただし2年目に売却する時も、やっぱり利益額に対して税金がかかってきます。利益は118万8,000ー108万=10万8,000なので、10万8,000の20%、2万1,600円が差し引かれて、116万6,400円が手元に残るお金になります。こんな感じで、同じ商品に同じ期間だけ投資をしていたとしても、途中で利益確定をして税金を払うより、できるだけ後で払うほうが、支払わない税金の分も運用で増える分お得になります。これが税の繰り延べ効果と言われるもので、長期の資産運用においては大きな差になってくることもあります。税の繰り延べ効果で長期的にどのような差がつくかのイメージは、別の動画でお話しているので興味のある方は見て下さい。とりあえず今回の動画では、「税金をできるだけ後から支払うほうがお得なんだな」っていうことがわかっていれば大丈夫です。
お得な売却戦略の基本的な考え方
で、本題のお得な売却戦略なんですけど、結論を言うと「自分が投資する商品を、リターンがズレるように複数に分けて購入しておいて、売却するときはリターンが低いものからしていく」という方法になります。これだけでは意味がわからないかもしれないので、具体的な例を出して解説していきます。例えば20年後に資産の取り崩しを始めるとして、1年目~10年目までは楽天証券で、11年目~20年目はSBI証券で同じ投資信託に積立投資をしたとします。そしてその投資信託が毎年6%上昇すると仮定すると、リターンはだいたい、楽天証券の分は+148.5%、SBI証券の方は+36.6%になります。イメージがしやすいように毎月5万円を投資していたと仮定すると、評価額は楽天証券が1,490万円、SBI証券は819万円です。それに対して、もしずっと同じ証券会社で、その他の条件はすべて同じで投資をしていたと仮定すると、リターンは+92.5%になります。元本も評価額も、合計すれば同じなんですけど、証券会社を分けた方は、リターンが高い方と低い方で分かれています。こちらが「自分が投資する商品を、リターンがズレるように複数に分けて購入しておく」という、売却戦略の準備部分になります。そして売却していくときに、リターンが低いものからしていくのが、お得な売却方法です。この例で言うならSBI証券の投資信託から売却していくということになります。一応言っておくと、一括で売却してしまうとまったく同じ税金がかかるので、分けた意味がありません。でも資産形成を目的とした長期投資をしていた場合は、売却も毎月20万円とか、必要な分だけ少しずつしていく人が多いと思います。その売却をリターンが小さい方からしていくということですね。最初に税の繰り延べ効果についてお話したので、勘の良い方はわかっているかもしれませんけど、リターンが小さいということは、売却時に支払う税金が少なくて済むということです。証券会社を分けずに投資をしていた場合は、取得価額がすべて平均化されているので、最初の売却では92.5%のリターンで計算されて税金が取られてしまいます。それに対して、リターンをズラしておいて低い方から売却をした場合は、最初の売却にかかる税金は36.6%のリターンで計算されます。もちろんSBI証券の投資信託をすべて売却し終えてから、楽天証券の投資信託を売却し始めたら、税金は多くかかります。でも売却の前半で支払う税金が少なくなれば課税の繰り延べ効果が働くので、1つの証券会社で投資をしていた場合よりもお得になります。これがお得な売却方法の基本的な考え方です。ただ、今お話していたのは、数字はもちろんですけど、やり方も1つの例に過ぎません。ここからはリターンをズラすための方法を4つ紹介していきます。
リターンをズラす方法
証券会社を分ける
まず1つ目は先ほどの例で説明したように、証券会社を分ける方法です。この方法のメリットは、将来的にも使える可能性が高い方法であることです。証券会社同士が合併したりしない限りは、別の証券会社で保有している同じ商品が合算されることはあんまり考えられないですよね。デメリットは証券会社を複数持たなければいけなくなるので、資産管理が多少煩雑になるかもしれないことです。私は貰えるポイントとかの関係もあって、証券会社を複数使い分けているので、まったく気になりません。ただできるだけ分けたくないという人もいると思うので、そういう人は別の方法があります。
ベンチマークが同じ、別の投資信託を買う
2つ目はベンチマークが同じ、別の投資信託を買う方法です。インデックスファンドの場合はベンチマークが同じ商品をいろんな運用会社が販売しています。例えばeMAXIS Slim 先進国株式インデックスファンドとニッセイ外国株式インデックスファンドは、どちらもMSCIコクサイに連動する投資信託なので、ほぼ同じ値動きをする商品です。この2つに関しては信託報酬も0.1023%で同じなので、ほとんどリターンも同じになるはずです。ということは、証券会社を分けている場合と同じような感じで、両方の商品に投資をすればリターンをズラすことができます。今eMAXIS Slim 先進国株式インデックスファンドに投資をしている人は、積立期間の後半頃にニッセイ外国株式インデックスファンドに投資先を切り替える、とかそんな感じですね。この方法のメリットは証券会社を分けなくてもリターンをズラす事ができることです。そして別の証券会社を使う方法と同じで、将来的にも使える可能性は高い方法です。デメリットは自分が投資している商品と同じベンチマークの商品がないとできないことと、仮に同じベンチマークの商品があっても、信託報酬に差があり過ぎるとちょっともったいない気持ちになることです。まあ優良なインデックスファンドはちょこちょこ増えているので、今は代替になる商品がなくても、将来的には選択肢ができているかもしれません。
投資信託の分配金受取方法で分ける
次にリターンをズラす方法の3つ目は、投資信託の分配金受取方法で分ける方法です。投資信託では分配金の受取方法を、受取型と再投資型のどちらかで設定することができます。基本的には資産形成期には分配金は受け取らずに再投資をした方が良いので、ほとんどのインデックス投資家は再投資型を選択していると思います。ただ私が普段オススメしているような優良なインデックスファンドは、そもそも分配金を出していないので、実際のところはどっちを選んでいたとしても、同じ結果になります。でもこの分配金受取方法を分けることによって、同じ商品でも、別の商品のように扱ってくれるんです。なので、例えば積立期間の前半に再投資型で購入していたなら、後半は受取型に変更することでリターンをズラす事ができます。この方法のメリットは証券会社を分ける必要がない上に、同じ投資商品でリターンを分けることができることです。デメリットは楽天証券ではできるんですけど、たぶんSBI証券ではできないことです。楽天証券ではすでに保有している投資信託を新たに買い増すときも分配金コースの選択ができるんですけど、SBI証券では「既に保有中のため、現在設定中の受取方法になります」って出て、選択できないんですよね。あとはデメリットというわけではないんですけど、この方法は裏技みたいなやり方になるので、将来的にも使えているかどうかはちょっとわかりません。「これ選択できる意味ないじゃん」ってなって、楽天証券でも選択不可になる可能性もあるとは思います。
口数指定買付と金額指定買付で分ける
次にリターンをズラす方法の4つ目は、口数指定買付と金額指定買付で分ける方法です。投資信託の購入は一般的に金額指定買付だと思います。「2万円分購入する」とか「5万3,000円分購入する」とかそういう感じですね。・・・・・・・・・・ただSBI証券では金額ではなく口数で指定して購入することもできます。そして口数買付と金額買付は別扱いになるので、同じ投資信託でもリターンをズラす事ができます。この方法のメリットは3つ目と同じで、証券会社を分ける必要がない上に、同じ投資商品でリターンを分けることができることです。ただこちらは3つ目よりもデメリットが多いです。まず楽天証券では口数買付が多分ありません。そして将来的にSBI証券でもなくなっている可能性はあります。さらに、「好きな金額で買い付けることができる」っていう投資信託の大きなメリットが口数買付ではなくなってしまいます。一括である程度投資をする場合は問題ないかもしれませんけど、あんまり使いやすい方法ではありません。以上がリターンをズラす方法の紹介でした。
補足説明
ではここからは補足説明をしていきます。補足その1、リターンは何個に分けても良い。今回の説明では、積立期間の前半と後半みたいな感じで、2つに分けて説明していましたけど、別に3つでも4つでも分けることはできます。例えばS&P500に投資をしているとして、1年目~5年目は楽天証券でeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を再投資型で買って、6年目~10年目は楽天証券で同じ商品を今度は受取型で買って、11年目~15年目は同じ商品をSBI証券で買って、16年目~20年目はSBI証券でSBI・V・S&P500インデックス・ファンドを購入してもいいわけです。商品とか証券会社が増えるのは嫌な人もいるかもしれませんけど、資金効率的にはよくなります。補足その2、使いみちは老後の出口戦略だけではない。例えば自分の老後資金を貯めつつ、子供の教育費用も運用する場合とかがあると思います。「老後資金として必要なのは20年以上先だけど、子供の大学入学は5年後だぞ」っていう人が、すでにある程度利益が出てしまっている商品を、子供の学費用のお金で買増ししていくのはちょっともったいないですよね。今回の方法を使ってリターンをズラしておいた方が、5年後に売却するときの税金が少なくなります。そして売却戦略とは別の話ですけど、以前頂いたコメントで、「家計としての積み立て投資と、自分のお小遣いとしての積み立て投資を分けて行いたい」という人がいました。こういった場合も、今回のように別扱いされるやり方を知っておくと役に立つかなと思います。補足その3、つみたてNISAの出口も最適化できる。以前つみたてNISAの出口についてお話した動画に、鋭いコメントがきていました。私は動画の中で「つみたてNISAの商品は非課税期間が終わって売却しなかったとしても、非課税期間終了時の基準価額が取得価額になって、課税口座に自動的に移動するので、無理に売却する必要はないですよ」って紹介していました。ただ実際は、もし特定口座に、つみたてNISAで保有していたのと同じ投資信託が、含み益たっぷりの状態で存在していたら、つみたてNISAから特定口座に移動した時に、特定口座内で合算されてしまいます。せっかく利益が乗っていないつみたてNISAの投資信託に、利益が乗ってしまうのはもったいないですよね。この場合も今回の方法のいずれかを利用して、別々で保有するようにしておくのがオススメです。非課税期間の終了前に売却して、別の証券会社で買い直すとかそういう感じですね。ただつみたてNISAの非課税期間の終了は、最短でも16年後くらいなので、それまでにはいろいろと投資信託業界も変わっているとは思います。ということで、ちょっと細かい話でしたけど、お得な売却戦略でした。「この動画よかったなぁ」と思ったら、グッドボタンとチャンネル登録をよろしくお願いいたします。最後までご視聴して頂きありがとうございました。
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