(この記事はYouTubeにアップした動画の書き起こしです)
こんにちはかおるです。投資のお勉強をしていると「税金の繰り延べ」という言葉を耳にすることがあると思います。例えば「利益確定の売却をしてしまうとその時点で税金が取られてしまうので、長期的に売却しないで保有したほうが税金の繰り延べができてリターンが大きくなりますよ」とか、「高配当株は配当の受取で税金が取られて、繰り延べができない分不利になりますよ」とかそういう話ですね。今日はこの税の繰り延べ効果について詳しくお話していきます。まずはこの動画の目次です。最初に税の繰り延べ効果とは何かというのを説明したあとに、実際にどれくらいの差になるのかを検証して、最後に補足や注意点をまとめていきます。
税の繰延効果って何?
税の繰り延べ効果というのは、「支払う税金を先送りにして、払わなかった分のお金を運用に回せば資金効率が高まるよ」っていうシンプルなお話です。簡単な例で見てみましょう。100万円で購入した投資信託が1年後に110万円、2年後に121万円と、毎年10%成長したとします。もしずっと保有していて、2年目に売却したとすると、利益は21万円です。株式投資では売却時に利益が出ていたら20.315%の税金がかかるんですけど、今回はわかりやすく20%で計算していきます。21万円の20%で4万2,000円の税金がかかるので、手元に残るお金は121万円から4万2,000円を差し引いた116万8,000円になります。では1年目にも売却して、2年目にも売却した場合はどうなるのか、計算してみましょう。1年目に売却する時点で10万円の利益が出ているので、20%分、2万円の税金が引かれて、手元に残るお金は108万円になります。この108万円を再度同じ商品に投資すると、翌年は10%値上がりして、評価額は118万8,000円になります。ただし2年目に売却する時も、やっぱり利益額に対して税金がかかってきます。利益は118万8,000ー108万=10万8,000なので、10万8,000の20%、2万1,600円が差し引かれて、116万6,400円が手元に残るお金になります。あら不思議、同じ銘柄に、同じ期間投資していたとしても、途中で利益確定をしていたら、ずっと保有していて最後に利益確定をする場合よりも、最終的な税引き後の利益は少なくなってしまいます。これが税の繰り延べ効果で、税金を途中で支払わずに運用に回している分だけ、長期保有している方が成績が良くなる仕組みです。この話を聞くと「1年目で売却した後に、もっと安い値段で買うことができれば成績は良くなるでしょ」と思うかもしれません。その疑問は正しくて、「株価が下がりそうだから一旦売却しちゃえ」って考えて売却をして、予定通りに株価が下がって、安い値段で買い直すことができれば、もちろんその方がパフォーマンスは高くなることがほとんどです。税の繰り延べ効果は確実に存在はしますけど、タイミング投資がしっかりハマった時の利益に比べたら、大きいものではありません。ただ投資のプロでも、インデックスのリターンをなかなか超えられないと言われている世界なので、うまくいかないことも多いと思います。例えば下がることを予想して110万円で一旦売却して、105万円で買い直そうと思っていたとします。でも実際は全然下がらずに115万円になってしまうかもしれませんし、予定通り一度は下がり始めたとしても、105万円までは下がらずに結局110万円に戻ってしまうかもしれません。例え一回うまくいっても、何回もやるうちに予想が外れて、結局トータルでは、ずっと保有していた場合よりも成績が悪くなることも考えられます。私は10年以上、いろいろな投資をしてきた中で、現状はインデックスを長期保有し続けることが、一番コスパが良いと思っています。税の繰り延べ効果も含めて考えると、余計なことはしないで継続保有を続けるのが基本的にはオススメです。まあ資産の一部でお試しでやってみるのとかは良いと思いますけどね。ちなみに利益確定の売却というのは、株式の配当金とか、投資信託とかETFの分配金にも置き換えることができます。例えば米国ETFのVOOと、国内の投資信託のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はどちらもS&P500に連動するので、数字上はほとんど同じリターンになります。ただ信託報酬はVOOが0.03%、スリムS&P500は0.0968%なので、一見VOOの方がお得になりそうな気がしますね。ただVOOは分配金が出てしまうのに対して、スリムS&P500は出ないので、税の繰り延べができる点ではスリムS&P500の方が優秀です。配当金とか分配金というのは、その金額分だけ売却しているのと同じですからね。私が高配当株とか、高配当ETFをあんまりオススメしないのはそこが理由でもあります。配当がたくさん出る商品Aと、少ししか出ない商品Bがあったとして、仮に同じリターンを出していたとしても、配当が大きければその分支払う税金も多くなるので、税の繰り延べ効果で、配当金が小さい投資商品の方が手元に残るお金が多くなるからです。もちろん商品Aがそんな繰り延べ効果なんてものともしないくらい、将来的にリターンが大きくなると思っているのなら、そちらに投資してもなんの問題もありません。
どのくらいの差になるの?
では税の繰り延べ効果は長期ではどのくらいの違いになるのでしょうか?これをイメージしておくことで、自分の投資方針も定まるかもしれないので見ていきましょう。条件は毎年定率で上昇して、継続して保有して税金を繰り延べしつつ最後に売却して課税される場合と、毎年売却して課税される場合です。税金は20%で計算して、手元に残るお金が、1年目に投資をした金額の何倍になっているかの数値を記載しています。例えば年平均リターンが7%だった場合の、30年後の運用成績は、税金の繰り延べを続けていた場合は6.29倍、毎年売却をした場合は5.13倍です。100万円投資していたと仮定すると、629万円と513万円ですね。この表を見て思うことは人によって違うと思います。例えば4%で見ると、30年後でも2.79倍と2.59倍の違いしかありません。「税の繰り延べ効果があるから長期保有がオススメだぞ」っていう言葉だけを今まで信じていた人からすると、「あれ思ったより差は大きくないな」って思うかもしれません。一方で攻撃的なポートフォリオを組んでいて、「年平均10%くらいはいけるぜ」と息巻いている人は、それなりに差がついていると感じると思います。30年後には14.16倍と10.06倍ですからね。1年目に100万円投資していたとして、1,416万円と1,006万円では大きな違いです。「30年も10%のリターンを続けられるわけないだろ」と思うかもしれませんけど、実際S&P500の配当込みのリターンは過去30年では10%くらいあります。もちろんそれが続く保証はまったくありませんけど、インデックスでも長期的に10%を超えるリターンを出し続けることは、非現実的な話ではありません。この表を見てわかることは、当たり前の話ですけど、繰り延べの効果は年数が長いほど、そしてリターンが高いほど大きくなります。そして今回は税率20%で計算をしていますけど、最近話題になっているように、いずれは30%に引き上げられる可能性も高いです。そうなると繰り延べの優位性がますます高まることになるので、覚えておくと良いと思います。
補足と注意点
ではここからは補足説明をしていきます。まずその1、実際の値動きは定率で3%~10%とは限らない。ここ10年では、S&P500は年平均15%、NASDAQ100は年平均21%も上昇しています。今回の表には入れていませんけど、こういった期間は当然繰り延べ効果はもっと大きくなります。もちろんその逆で、3%未満になる可能性もあって、その場合は繰り延べ効果はかなり小さくなってきます。そして実際の株価の値動きは、波があって定率ではないので、仮に年平均リターンが同じでも、繰り延べ効果は若干今回の計算とは変わってくる可能性はあります。補足の2つ目、ちょこちょこ売買する場合は取引手数料がかかる場合もある。今回の計算には入れていませんけど、ETFとか個別株の場合は取引手数料も発生するので、その分売買を増やすほうが不利になります。補足の3つ目、積立投資だともう少し差は小さくなる。この表は1年目に投資をした場合の差を表しています。例えば1年目に100万円を投資して、年平均リターン10%で20年運用したら558万円と466万円の差があります。でも10年後にも100万円を投資したとすると、その100万円は、20年後までに10年間しか運用しないことになるので、その差は227万円と216万円しかありません。積立投資をすると後から投資をした分の運用期間は短くなるので、その分、この表よりもトータルでの繰り延べ効果は小さくなります。補足の4つ目、ここまでの話はあくまでも売却した後の買い直しで、プラスにもマイナスにもなっていないことが前提です。税金の不利とか、手数料の不利を乗り越えて、上手にタイミング投資ができたり、もっと良い商品に乗り換えることができれば問題ありません。ポートフォリオのリバランス程度の売却なら、まったく気にする必要はないと思います。ということで、税金の繰り延べについてお話させていただきました。何かの参考になれば嬉しいです。このチャンネルでは節約とか投資とかお金に関するお話をいろいろとしています。一緒にお勉強してくださる方は他の動画も見ていって下さい。最後までご視聴して頂き、ありがとうございました。
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